Day1のレポートはこちらから
発酵ガストロノミーツアー@里山十帖 Day1
越後湯沢の里山に佇むお宿、里山十帖の半地下には”発酵部屋”なるものが。
料理長の桑木野さんにご案内いただき、普段は入れない”発酵部屋”にお邪魔しました。
半地下の階段を下りていくにつれ外気に近い温度になる発酵部屋、
冬は1℃程度、夏でも12-3℃にしか上がらない、低温蔵のような場所。
5か月間は雪の中という厳しい冬を迎える前に、四季折々に採取された山の実りは様々な保存方法で発酵部屋に並んでいきます。
木桶で漬け込む沢庵、野沢菜、ぬか漬け、などの自然発酵食品から、味噌や塩麹、しょっつるのような調味料、山菜、果物や木の実のシロップ漬け、脱気しただけの瓶詰めにした若芽竹に至るまで、様々なものが仕込まれています。
中段のイカの魚醤は海外のシェフから託されたもの。
真菌が広がり、発酵<腐敗に近づいている気配…笑
下段のものは高濃度のアルコールに漬けられたマムシ。
料理人につきものの火傷、マムシエキスか熊の脂がてきめんなのだとか。
ほとんど実験室のようなこちらの場所、色々なものを発酵させては味見を繰り返し、結果失敗してしまうものも多数あるといいます。
それでも手をかけて発酵させた食材たち。
もったいなくて捨てることもできず引き続き寝かせていたところ、数年を経て熟成が進み、お客様にお出しできるようになるものが生まれることも。
上段は杉のピクルス。
スプラウトの状態で漬け込み、ローズマリーのような風味に。
中段下段の青胡桃はウォッカとスパイスで漬け込んだもの。
仕込んでから年数が浅い段階ではとても使えなかったものの、三年寝かせて熟成が進み、ようやく旨味が生まれ使えるようになったのだとか。
ツルニンジンはアルコール漬けのほか、パウダーにして薬膳的に使うことも。
杏仁子(ウワミズザクラ)の小さい実も秋に収穫したものを漬けこんで。
木天蓼(またたび)はそのままだと灰汁が強く、口の中が痛くて食べられない。
塩漬けやアルコールに漬けて保存し、食材のアクセントとして使う。
沢庵を漬け込む木樽
樽自体についている菌と低温発酵の力で乳酸菌がよく働き、まろやかでおいしい漬物ができる。
本来塩分濃度20-30%で漬け込むものが一般的だが、1.5%程度と塩分濃度を低めにして重しをしてアミノ酸率を高めて低気温でゆっくる乳酸発酵させている。
冬で幹が締まっているかと思いきや、触るとふんわりあたたかい
まもなく樹液が出ますよ、の合図とのこと。
採った樹液を煮詰めたらメープルシロップに。
夏みかん、きんかん、梅…
塩蔵からシロップ漬け、とにかく色んなものが漬け込んである菌庫。
但し麹菌と納豆菌を使うものは別の場所で。
テンペは温泉の熱を使って麹菌を発酵させるが、その場所は桑木野さんともう一人のスタッフのみしか立ち入れないようにしているほどデリケート。
納豆は無農薬のわらを使って、納豆蔵で。
お家で簡単に作ってみるのであれば、刻みキャベツや白菜に塩をかけて乳酸発酵させるザワークラウトがおすすめですよ、と教えていただいた。
エントランス脇にある暖炉の上には保存食として誕生した自家製の発酵和菓子「柚餅子(ゆべし)」が。
雪深い土地ならではの発酵・保存法の知恵、自然と共生していくこと。
ここには原点回帰をさせてくれるヒントが詰まっています。
Day2に続きます。